熊本への在来線の旅(その3)
【熊本への在来線の旅(その3)】
7時4分、定刻に発車した。ベルが鳴ることもなく、見送る駅員氏がいるわけでもなく、ドアが閉まりますの自動音声とともにドアが閉まり動き出した。車内の一端にできたガラス張りのブースのような運転席からはかちかちかちとマスコンを動かす音が聞こえてくる。
ぐぐっと加速したかと思うとゆっくり流す。それはこれから先、いくつか渡らなければならないポイントのためだった。ボルスタレス台車と車体の間の空気バネが車体をふっくらと支え、ポイント通過の左右動をゆったりと車体に伝えてくる。その度に乗客達は一様に左右に体をもっていかれる。
西鹿児島駅時代、787系「つばめ」の回送電車が駅構内のポイント部分で脱線したことがあった。車輪のタイヤ部分を研磨したての車両だったとのことで、これが原因なのではというところまで報道で聞いたことがある。それだけ、ポイント通過というのは車両にとって負荷が大きいのだろう。フランジとレールがきしみ合って出すあのキーンという音もこの部分で発生する。
後部の車両が最後のポイントを通過するのを待って、再加速する。宮田踏切を通る。まだ子どもだった頃、この踏切に何度通ったことだろう。当時は、踏切掛による遮断機の上げ下げが行われていた。これは反対側の黒田踏切も同じだった。
ジリジリ…というベルの音を鳴らしながら遮断機が下りてくる。そして、中途まで下ろした遮断機を最後の人が通り過ぎるのを待って完全に下ろす。踏切掛は手旗を振って、踏切の安全を運転士や機関士に伝え、通り過ぎる列車を見送る。
小生は通過する列車を見送りながら、そんな鉄道風景を飽きもせず跨線橋の上から眺めるものだった。まだ、蒸気機関車の姿も時折見ることができる時代だった。
横でぽかんとして乗っている長女と同じくらいの年代の頃のお話だ。
その跨線橋も老朽化のため撤去され、思い出の場所は失われてしまった。そんな感傷に浸っている間に、カーブで車体を右に大きく傾け始めた。左手にはかつての鹿児島工場が見える。
留置線には赤い485系が編成を解かれて並んでいた。引退後かなり経過しており、しかも桜島の降灰などもあり、かなりくたびれた様子。手前にはキハ28と58の改造車「あそ1962」も留置されている。こちらもかなりくたびれている。
列車はぐんぐん加速して鹿児島車両センター、そしてかつて引き込み線があった専売公社倉庫の横をかすめて本線を進んでいく。
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